導入事例: 秦野市立鶴巻小学校様

学校の ICT 化に全市を挙げて取り組む秦野市

神奈川県秦野市では、2014 年から市内の小学校への iPad やデジタルノートアプリ「ロイロノート・スクール」の導入、ICT を活用した授業ができる先生の養成など、全国の自治体に先駆けて学校 ICT 環境の整備と活用に取り組んできました

2021 年度から始まった国の GIGA スクール構想においても、秦野市はこれまでの経験を活かし、Chromebook による児童生徒の一人一台端末環境を実現するのみならず、コロナ禍に伴う臨時休校に備えた在宅学習を支援する体制の整備を円滑に進めることができました。

タイピングに挫折してしまう子どもたち

秦野市立鶴巻小学校では、学校長のリーダーシップの下、GIGA スクール構想を校内で展開しています。校内通信環境の整備に加え、教室への Chromebook の導入も順調に進んでおり、児童が操作に慣れる夏以降は、希望する児童に自宅へ端末を持ち帰らせて家庭学習に活用する予定です。

鶴巻小の ICT 環境の整備が着々と進む中で、同校の視聴覚主任を務める吉村尚記先生は、児童が ICT を十分に活用できるよう、ICT スキルの習得を支援する取り組みを行っています。また、自身が受け持つ小学三年生のクラスで、総合学習の時間に Chromebook を活用した授業を展開しています。

コロナ禍により対面でのディスカッションが難しくなる中で対話型授業を成立させるには、児童に ICT 端末を通じて自分の考えを文章で表現する能力を身につけてもらう必要があります。そのためには、キーボードを使ったローマ字入力の習得が必須です

そこで、GIGA スクール元年となる今年の授業では、まず児童に ICT 活用の基本であるローマ字を使った読み書きとタイピングを指導しました。続いて、これを基礎として、名刺作りなどの制作活動デジタルノートを使ったグループワークに取り組んでいます。

ここで課題となるのがタイピングが苦手な児童への対応です。吉村先生は当初、他のゲーム形式のタイピング教材などを導入していましたが、以下に挙げる二つの課題があったと言います:

  • ゲーム形式でステージの課題を「クリア」しないと次の単元に進めないので、苦手な子が途中で挫折してしまう
  • 自身もタイピングが不得手な先生が多く、児童に正しい指使いを指導できない

タイピングが得意な児童はゲームを楽しみながらスムーズに課題をクリアしていく一方、苦手な子どもは一文字を打つにも何分もかかり、新しい単元に取り掛かれない状態に陥ります。しかも、そうした児童に全ての先生が効果的な指導ができるわけではないため、そのフォローに追われて授業が成立しないケースも多々ありました。

GIGA スクール構想の成功に欠かせないタイピングという課題をどう乗り越えるか。吉村先生はその重要性を認識して検討を進めていましたが、なかなかニーズに合うものが見つかりませんでした。

苦手な子どもを取り残さないタイピング教材

その吉村先生が、最終的に出会ったタイピング教材がプレイグラムタイピングです。プレイグラムタイピングを使うと、これまで児童にタイピングを指導したことがない先生でも、苦手な子どもを取り残すことなくタイピングを身につけさせることができます

これを実現しているのが、「充実したチュートリアル」「キーボードの指使いのお手本を表示する機能」です。

プレイグラムタイピングは、初めてローマ字を学ぶ子ども向けに「基礎練習モード」を用意しています。基礎練習ではローマ字入力の方法を五十音表に沿って導入し、一段ごとに「チュートリアルによる導入→ホームポジションの確認→文字入力の練習→単語入力の練習」と段階的に繰り返しながら学習を進めます。

時間制限などは設けられていないので、タイピングが苦手な子どもでも、躓いた箇所で足止めされることなく、カリキュラムを消化すれば次のチャプターに進むことができます。各チャプターは、前半で学んだ内容を後半ですぐに復習しながら実践する構成になっているので、児童のモチベーションを削がずに学習を進めることができます。


日本語タイピングの基礎となるローマ字を一段ずつ学べます

また、練習画面にはキーボードの指使いのお手本がビジュアル表示されます。児童は、これを真似しながら問題文を打つことで、それぞれのキーをどの指で押せばよいか自然と身につきます。

先生は児童にお手本にしたがって打つよう指導するだけでよく、自身のスキルに依存せずに教材を活用できるので、タイピング指導の負荷が大きく軽減されます。そのため秦野市では、吉村先生の紹介を通じて市内の小中学校22校に配布されている GIGA スクール端末にブックマークが設定されて利用できるようになるなど、プレイグラムタイピングの活用が鶴巻小から秦野市内へと広がっています。


お手本に従って練習することで正しい指使いが身につきます

基礎練習でローマ字入力を習得した後は、「特訓モード」「腕試しモード」で学習内容の定着と向上を図ることができます。

吉村先生は、基礎練習が終わった児童に、腕試しモードで実力を測定して過去の自分の成績と比べるよう指導しています。児童たちは、基礎練習の課題をクリアしてそこで終わりではなく、「特訓」と「腕試し」を通じて自分のタイピング能力が上がっていくのが実感でき、それがモチベーションにつながっているそうです。


腕試しモードにチャレンジ!

タイピングで広がる教育の新たな可能性

鶴巻小では、最初の一回は一時限かけてプレイグラムタイピングを導入し、その後は始業前や五分休憩、昼休みなどのスキマ時間を活用して練習するよう指導しています。タイピング練習に取り組む児童のモチベーションは高く、雨の日の昼休みなどで児童が楽しんで練習している光景が見られるそうです。

その結果、三年生のクラスでは学習を開始して一ヶ月で基礎的なタイピング能力(平均 0.7〜0.9 タイプ/秒)が身につき、授業で ICT 端末を活用した課題に取り組むことができるようになりました。

例えば、児童に「自分の好きな食べ物は?」とか「人気のある寿司ネタは?」等の質問をし、答えを Google Jamboard やロイロノート・スクールなどのデジタルノートに入力できるようになりました。当初は、課題の提出に5分から10分程度かかっていましたが、段々と習熟し、一学期の終わり頃には、自分の考えをまとめて記入することも難なく行えるようになりました

これまでの対面式の授業では、教室内で意見交換しようとすると、一人ずつ前に出て発表したり、数人のグループで意見交換をするのが限界でした。吉村先生は、児童がタイピングの習得によってデジタルノートを実用的なレベルで使いこなせるようになり、アプリを通じて教室内の全児童の意見を素早く共有・集約できるようになったことで、授業の進め方が大きく変わる可能性を感じているそうです

また、高学年のクラスでは、プレイグラムタイピングでの練習を通じて、すでに一定の速度でタイピングできるようになってきています。最近では、習得したタイピング能力を活かして、ウェブ検索で資料を見つけたり紙のノートの代わりに Google ドキュメントでメモを取ったり日記を書いたりするなど、タイピングを通じた様々な活動が可能になりました。

児童たちからのコメント

鶴巻小学校で学んでいる児童の皆さんからいただいたコメントを紹介します。

  • やってて楽しいし、勉強になってうれしい
  • やってて、楽しいです。これからも、がんばります
  • タイピングができるようになって、楽しいです
  • やるときにワクワクします
  • とても楽しい。自分の成長がグラフで分かるのがうれしい

吉村先生からのコメント

Chromebook が導入されるにあたり、一番の心配事は【タイピング指導】でした。しかし、導入から約3ヵ月経過した現在では、それは杞憂だったと感じています。子どもたちはとても楽しそうにプレイグラムタイピングに取り組み、メキメキと実力を伸ばしています。

子どもたちの笑顔を見ていると、Preferred Networks 社のような先進的な企業が学校教育に関わってくれることを本当に心強く感じます。また、こうした素晴らしいタイピングソフトを制作しているのが、鶴巻小学校の卒業生であり、私の同級生でもある加藤さんであることを、同じ学校の卒業生として誇りに思っています。

写真提供

秦野市立鶴巻小学校様

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